林:ふーむ、、、。当然その最終地点の灯台に行くつもりだったんだけど、全然違うところに行っちゃったりということも、結論から言うとあるわけですよね。
最初のイメージがあったんだけど、それに突っ走ってたんだけど、違うところに行き着いちゃいましたっていう。

佐野:ううん。灯台の光っていうのは目的地ではない。
灯台の光は、僕が行く道を照らし出してくれるガイド。
だからその灯台の光が見えてる、最初の目的地ではないから、何処に行き着くかは常にわからない。
行き着いた所が行き着きたかったところだ。
その間は仲間と一緒にベストを尽くすしかない。それこそ探求だと思う。
でもその灯台の光無くてしてはどうにも前には進めない。
やはり最初に浮かんだイメージそれこそが、創作においての拠り所、最初に閃いたイメージこそが全て。
そこに如何に近づいていくかが、僕のこうしたレコーディングの作業なんだ。
もうそのイメージが僕の頭にポッと思い浮かぶと、そこから先は寝られないことだってある。
そこに近づきたい為。苦しくはないけどね、あーでもないこーでもないと、探求が始まる。
言葉からの探求が、音からの探求が、僕の態度からの探求が。

林:その生まれてくる瞬間というのは突然やってくるんですか?

佐野:それはたぶん僕のようなクリエーターだけでなく、多くの人達が日々の生業の中で自然にやられていることだと思う。
僕のお母さんが台所でトントントンときゅうり切っている時に、彼女はたぶん、ある人生に対する明瞭なイメージをハッとね、思い浮かべているに違いない。
それを音にしよう、映像にしようと思わない限りは、彼女はきゅうりを切るところにそれを表現した。

林:ウーン、、、。

佐野:だから何も特別なことをやっているわけじゃない。、、、、、、、、、。
僕は時より真実なんてものは、何処にもないんだって割り切っちゃう癖があって、すなわちどんなドキュメントを見てもこのドキュメントで切り取られた以外のところに真実はあるに違いないって思うんだ。
ひねくれた関係だな。
でも、それも恐らく僕がクリエイターであるからだろうって思う。
もうやっぱり、物事を見る時にかなりいろんなものを疑ってかかってみてる。
僕の目にはこう写っているんだけれども、信号は赤なんだけれども、もしかしたらあの赤は、僕の目に写っているあの赤は、真実でないかもしれないといったように。
それくらい真実というものは上手に隠れる。
上手に隠れるし、僕の前に簡単には現れてきてはくれない。
時にはフッと予想を反して簡単に出てきたりするんだけど、捕まえようとしても、ちょっと待ってって言うと、またどっかの森の中に行ってしまう。
すごくやっかいなものだ。
だからその尻尾でも掴んでおいた時は本当に有頂天になる。ヘッヘッヘッてかんじ。
それが僕にとっては良い曲であり、良い歌であり、良いパフォーマンスである。
一瞬その尻尾を掴んだような、自己満足かもしれないけど、でも僕の聴き手やオーディエンスが、もしかして佐野さん掴みましたよね?なんて暗に僕にメッセージくれたりすると、そうだろ?っていうかんじになる。
自己満足かもしれないけど、そんなことを二十年間ずうっとやり続けてる。
僕の自然な生業なんだ。
でもソングライティングを仕事と思ったことは一回もない。
仕事になったら嫌になってしまう。
仕事じゃないからどんな厳しい探求も、これは冒険なんだとワクワクする事が出来る。
もし仕事になったら、何でこんな大変なことをやらなきゃいけないんだよって、それでもう止めてしまう。


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